RUI わたしの〜DAIRY LIFE〜in 砂流牧場

はじめに

ふと気がつけば、砂流牧場に来て約2年半が過ぎようとしています。
私は、今年3月で辞めることになりました。
砂流牧場で過ごした日々を振りかえってみると、たくさんの出会いあり、別れあり、
たくさんの初めての事を経験し、学ぶ事が出来ました。
ここに来るまで、動物は好きでしたが、まさか牧場で働くなんて
思ってもいませんでした。
砂流牧場に来るまでは働いていましたが、うまくいかず、
何をするにも自信がありませんでした。
次の仕事を悩んでいる時、ふと高校生の夏休みに行った北海道での
先進地研修に参加した時の事を思い出しました。
北海道での、広大な大地を走り回る牛たちの放牧風景に感動したのを思い出します。
ちょっと働いてみたいという好奇心と、毎日楽しかった思い出に
後押しされ、まず、1年間研修をする事になったのがきっかけで、砂流牧場へ来ました。
この時、初めて身近に、こんなに大きい牧場があることを知りました。
来た頃は、出来ない事、知らない事ばかりでとまどい、前にある仕事を
こなすことで精一杯の毎日でした。

思い出

研修を初めてすぐ、1頭の牛との出会いがありました。その牛の名前は「ルイ」
私と同じ名前を砂流さんが付けて下さいました。
初めて任された仕事は共進会のための「ルイ」のシャンプーでした。
砂流さんに、「るいちゃんにも牛引っぱってもらうけんな!」と言われた時は、
「えっ!?絶対ムリ!!」 まさか自分が牛を引くなんて!と、とてもびっくりしました。
共進会までの間、牛の引き方を教えてもらい、練習を頑張りました。
「ルイ」はとてもおとなしく、なでってやったり、シャンプーをしてやると、
とても気持ちよさそうにしていて、とても可愛く、
何もかもが初心者の私に気をつかってくれていたのかな~と思います。
そして当日、私はとても緊張していて、ドキドキしていたのを覚えています。
砂流さんや皆さんが、「大丈夫だよ!」、「頑張って!」などと声をかけて下さり、
緊張が頑張ろうという気持ちにかわりました。
「ルイ」は、練習通りとまではいきませんでしたが、
いうことを聞いて、頑張ってくれ、自分が引いているというより、
「ルイ」に引かれていた私だったけど、何とか、無事に終える事が出来ました。
初めての共進会、何がなんだか分からない精一杯の状況だったけど、
いい経験になりました。
優しすぎる、素直な性格なせいか、「ルイ」はずっと他の牛にいじめられていました。
エサも皆が食べ終わった残りを食べていました。
そんな「ルイ」もたくましくなり、共進会の1年後にお母さんになりました。
子牛はオスだったので売られていきましたが、
「ルイ」の成長した姿に嬉しくなったのを覚えています。
そんな安どの気持ちもつかの間、分娩後、「ルイ」は体調を崩してしまいました。
分娩後体調を崩す牛はいましたが、治療するとわりとすぐ回復していたし、
「ルイ」もすぐ良くなると思っていました。
ですが、なかなか良くならず、手術をすることになりました。
なんとか元気になってほしい、頑張って!!とずっと願っていました。
しかし、願いは届かず、天国へと旅立ちました。
元気になるものだと思っていたので、とてもショックでした。
「ルイ」は牛を飼うことの厳しさ、
命の尊さなどたくさんの事を教えてくれました今でも、
苦しい時「ルイ」を思い出し頑張っています。
「ルイ」には「ありがとう」を伝えたいです。
これが一番忘れられない思い出です。

先輩&研修生



働き始めた頃、私よりも年下の高野君という先輩がおられ、
色々な事を指導してくれました。
高野君は、責任感も強く、てきぱきと仕事をこなし、
年下とは思えないほど大人びて見えました。
何もかもが初めてでぎこちない私に、優しく丁寧に教えてくれ、
フォローをしてくれました。
約3ヵ月という短い間でしたが、
次の目標に向かって頑張っておられる姿は、とても輝いて見えました。
そんな高野君も酪農大学校に進学され頑張ってることを
ちょこちょこ聞くようになりました。
そして、去年の4、5月には彼女のまおちゃんが研修に来ました。
まおちゃんが研修に来た当日、ポニーのミキティーが
メスの赤ちゃんを産みました!!!
予定では、5月頃だと聞いていたのでとてもビックリしました。
私もまおちゃんも、牛の出産には慣れていましたが、
ポニーの出産は初めてだったので、どうしていいか分からず、
心配でしたが、見守ることしかできませんでしたが、
とっても安産でほっとしました。


子馬は、すぐに立ちあがり、1時間もしないうちに走り回っていました。
名前はまおちゃんと相談して、「メルティー」と名付けました。
いつも大体ひとりでの作業が多いで、
まおちゃんとの2ヵ月間はとても楽しくあっという間に過ぎました。
小さくて可愛かったメルティー、もうすぐ1年になります。
この頃は、噛み癖も直り、だいぶ丸くなってきて食欲大性。
お母さんは厳しいみたいで、
優しいおばさんのカレンの方がいいみたい。
牧場のアイドルです☆☆☆

オーストラリア

一昨年の12月オーストラリア人の女性、
ジェーンさんが1週間寒い中研修に来られました。 英語の出来ない私は、その話を聞いた時、とても不安でした。
しかし、心配無用でした。
ジェーンは、とても優しく、気さくで、
私のジェスチャーと片言の英語を理解してくれ、
とても楽しい1週間は、あっという間でした。
ジェーンが来た当日はちょうど毎年恒例のクリスマス会の日。
当日にもかかわらず、英語でクリスマスソングを歌って、
盛り上げてくれました。
2人で、棚も作りました。
ジェーンは、実家でお父さんの手伝いで大工仕事をしていたようで、
工具の使い方が上手。
ジェーンと一緒に撮った写真お飾り、
サインとメッセージを書いてくれ、完成しました。
ジェーンの実家が羊牧場という事もあり、
今年の2月、獣医さんでお友達の鈴木先生と2人で
オーストラリアへ行くことになりました!!!
羊年の私、羊年に羊牧場に行けるという偶然が重なり、
さらに楽しみにしています。
まさか牧場で外人さんとお友達になれ、
しかもオーストラリアにまで行けるなんて
思ってもいなかったので夢のようです。
こんな素晴らしいチャンスを与えて下さった砂流さんに感謝です。

アメリカ

今年の1月には、砂流さん夫婦が神戸の高速バス乗り場で
偶然乗るバスが一緒で話しかけられ、
意気投合した、アメリカ出身の19歳のコールと
20歳のボールド・ウィンという男性が2人来られ、
すき焼きパーティーをしました。
日本語ぺらぺらで、背も高くて、イケメンで、大人びていていました。
日本で一番ビックリしたことは、和式トイレだそうです。
2人は、「日本の若者は夢をもっていない!やる気が見えない!」と言っていました。
日本とアメリカの若者の腕相撲大会などとても盛り上がりました。
2人は、どうしても砂流牧場で働きたいということで,近々こらるかもれ・・・
ピザ釜を作ってもらう予定です。楽しみです。
砂流牧場もだんだんとグローバル化?しつつあります。

柊ちゃん

いつも遊びにではなく、働きにきてくれる、4年生の柊斗くん。
将来は酪農ロッボットを作って砂流牧場で働くのが夢だと話してくれました。
僕が大人になるまでここにおってよ、と言ってくれた柊ちゃん。
言われるたび、私何歳になるんだっけ?
おばさんじゃん!と考えさせられました。
河川敷の牧草も任せて!牛舎も新しくする!
機械もトラックも新車にする!と頼もしいかぎり。
まおちゃんが砂流牧場での研修が終わると聞くと、
お別れ会を計画してくれました。
小学生とは思えない発想や発言には驚かされました。
辞めるという事をいつ伝えるかだいぶ悩んでいましたが、
いざ言ってみると、だいぶあっさりしていて、
ちょっとショックでしたが、私のお別れ会を期待しつつ...
どんな大人になるのか将来が楽しみですね。

機械

初めてトラクターやタイヤショベルにも乗りました。初めはとても恐かったです。
操作も難しくなかなかうまくいかず...。
また、動きと動作がかみ合わず、ヒヤヒヤすることが何度もありました。
でも、毎日乗っているうちに、だんだんコツが分かってきて、今では、大きいタイヤショベルで
堆肥の切り返しや、牧草の集草や反転まで出来るようになりました。
去年の7月には、農耕車免許を取得しました。
免許取得に向けての練習では、ペダルに足がとどかない、ドアに手がととかないなど、
ハンディーがたくさん...
ぷらす、本番に、進路間違いするというミス...
なんとか無事合格できました。

イベント

6月には「まきばのおまつり」、12月には、「クリスマス会」など、
一年を通して様々な出来事がありました。
各地で行われる、研修やイベント、復興支援活動など、
スタッフとして参加させていただきました。
知り合いもたくさんでき、とても勉強になりました。
また、職場体験や保育園児などの対応もしました。
うまく相手に伝える大変さや、年齢に応じた話し方などを
学ぶ事が出来ました。

最後に

ここ砂流牧場には小さい子供からお年寄りまでたくさんの方々が訪れます。
色々な話を通し、地域とのつながり、地域への感謝の気持ちなど
様々なことを学ぶことが出来ました。
また、地域の方々に「頑張っちょうかや?」「頑張れよ」
と声をかけていただき、元気が出ました。
慣れない仕事、辛い仕事、厳しい仕事、たくさんありました。
寒い日も暑い日も体力勝負の毎日ですが、
それを上回るやりがいや、充実感、達成感を得ることができました。
そして1年終わる頃には、もう少し頑張ってみようという気持ちになり、
今まで約2年半続けることが出来ました。
今しか出来ないこと、今だから出来ること、いっぱいあります。
私は、その中の一つが達成できたように思います。
回り道や寄り道をする人生もありだなと感じる今日この頃です。
砂流さん御夫婦の指導のもと、
地域の方や関係スタッフの方との関わりを通して、
来た時より少し成長出来た自分と、
今まで頑張れたという自信を感じています。
本当にありがとうございました。
牧場生活もあとわずか・・・
悔いのないように過ごしていきたいと思います。

講師

1月28日、安来第一中学校へ、講師として行って来ました。
砂流さんと2人で行く予定でしたが、砂流さんのいつもの急な思いつきで、
コールとボールド・ウィンにも声をかけ、一緒に行って来ました。
中学生のみんなは、アメリカ人を見て、緊張している様子・・・。
コールがハイタッチで緊張をほぐしてくれました。
酪農の話に行きましたが、2人のアメリカの話の方がみんな興味深々でした。
授業を通して、酪農についてもそうですが、世界にも興味を持ってもらえたらいいなと思いました。
2人のおかげで、無事楽しい、グローバルな授業をする事ができました。
2人もとても楽しかったと言っていました。

フォトギャラリー

2年半で数えきれないほどの写真を撮っていただきました。
旅立ち